― 日輪 ―

 

 

   ―――朝が来る。

   空を目にし、孫市は緩く息を吐いた。

   動作につられるよう、自然と下りたまぶた越しにまばゆい陽の光が映る。

   皮膚に流れる血潮を透かすのか、その色はほんのりと赤い。

 

   それでいい。

 

   どこか奥底で呟く。

   “赤”は、馴染みある色だ。

   日々の糧のため、問わず向かった戦場で何度も目にしたもの。

   それに、

   今はだらりと脇に垂らしたこの両手も、もう血に塗れているのだから。

   だから、見慣れた赤なら……いいのだ。

 

   だが

 

 

 

 

 

   「………んなに晴れるなよ…」

 

   苦みの滲んだ声に、我がことながら情けなくて頭を抱えたくなる。

   それは、あまりにも弱々しく

   そして―――あまりにも正直だった。

 

 

 

   雲一つない天に浮かぶ色。

   燦然と輝く黄金の光に目を閉じる。

 

   かつて隣立ったかの者も、その色を好んでいたと

   たとえ虚ろにさえ思い出したくないのに。

 

 

 

 

 

 

   未だ、まぶたは上げることが出来ず

 

   ただ深遠へと沈む。

 

 

                                                                06.03.12UP

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   孫市ルート本能寺の変前。

 

 

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