眠り姫シリーズ ― side. ―
「…あらあら」
がさごそ、がさごそ…。
乾いた音が少しずつ大きくなっていく。まるでそれは何かを集めているような音で。
「まあまあ…」
ごっそり。
音が止んだ後には大きな山が出来ていた。
「姫ったら♪」
にやり。
その時偶然通りかかった猫が脱兎の如く逃げたとか何とか。
「ぐはっ!?」
どさどさどさーーーーー!
はい、大きな大きな蓑虫ならぬ蓑龍昇の完成です!
「な、な、なっ??!!」
どうやら姫は未だこの状況を把握しきれていないご様子。
何事かと必死に辺りを見回しています。
せっかくなので優しくこちらへと導いてあげることにしましょう。
「あははははははははーーーーっ」
そう、思う存分腹の底から感謝の気持ちを込めて笑って差し上げるのです!
勿論その際には指をさすことも忘れずに!
有難う、期待以上の反応を!
「っ、っ!!」
やっと姫のお気づきです。このままでは気付かれないかと思っていた王子はホッと一安心。
さあ今こそ姫のその手をとって…」
「気持ち悪いことをするな!!」
「もーノリ悪いんだから龍昇って」
頭にのった蓑…いや、枯葉を振り落とすこともせず立ち上がる龍昇にはこれ見よがしなため息を返した。
それに更に龍昇の怒りは募るわけで。
「ノリ以前の問題だと思うんだが?!」
「つまんないなぁ、ただの冗談なのに」
「お前は冗談で人を殺すのか!!!?」
「ん?大丈夫大丈夫、枯葉山盛りぐらい全然平気!」
「お前が答えることじゃないと思うんだが?!!!」
「はっ、軍師殿がお休み中でしたので、その安眠をお守りするため微力ながらもお力添えをと!」
「何が微力だ!危うく窒息しかけたぞ!というより今はそんなに寒い季節ではない!!」
枯葉といえどもあれだけ集めれば相当の重量があったのか、龍昇の訴える目は本気だ。
しかし今にも掴みかかってきそうなその龍昇に対しはにっこりと微笑みかけるだけである。
それに無双ゲージも満タン(?)となりそうだった龍昇は動きを止めた。
(そういえば、前もこんなことが…)
苦い、出来れば消し去りたい思い出が頭をよぎる。
このままではその二の舞だ、と龍昇が引き際を見極めるも遅く、
「いやー、姫が風邪ひいたら可哀想だと思って」
「……っ!!!」
苦い、痛い思い出は曝されたのだった。
「おっと龍昇軍師、爆発寸前です。某挑発に乗りやすい軍師と良い勝負ですな!」
「……お前というやつはっ!」
「と、まあこの辺にしといて」
流石にこれには怒りも沸騰寸前で、声を荒げようとした龍昇の肩にからかいでない笑みを浮かべてが手をのせる。
「!?」
「湯船にでもゆっくり浸かって汚れを落としてきなさいな」
流れるように彼の体を反転させ、その背を強く押す。
「肩こりするなんてもう年ね、龍昇?」
「……誰のせいだ」
反撃を絶やさずも彼が進む方向は示した方で。
あっさりと自分の考えを悟られてしまったことが分かる。
彼はここ最近まともに寝ていない。
それは自軍の軍師として、とても有難いことなのだけど。
どうせ眠るならこんな所でなく、風呂でも入ってから自室で寝てほしい。
そう考えていたことを悟られるのは少し、癪で。
「…に見抜かれるようじゃ俺もお終いだな」
そんな自分に、苦笑とともに彼の言葉が届いた。
と、このまま姫を見送るような王子では勿論ありません。
さあ、最終兵器発動です!
「あ、殿とのお茶は断っておきましたのでご安心ください、姫♪」
「!!な、な、なっ…!!!?」
響き渡る叫びを背に、また一つ白星を数え笑みを浮かべた。
(龍昇に見抜かれただけで終わるのは嫌だしね)
やはり大将軍殿は軍師殿より一枚上手なようだ。
05.05.03U
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龍昇の苦い思い出とは、『姫の理由』で明らかにされています。(宣伝?)
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