― 背中合わせ ―
味方が苦戦しているとの報を受け、急ぎ救援へと向かった先は――…
「凌統…」
「……仕方ないだろ。あちらさんの策が上手だったんだよ」
思いをこめて呟けば憮然とした声が返る。
幾人もの敵に囲まれた中、赤の衣が流れるようひるがえった。
動作に一人、二人、敵が散る。
その隙を逃さず彼の背後へと回った。
囲いをわずかでも崩しながら、かつため息と共に。
「加勢、どうも」
「ゆーしゅーな将さまを失うわけにはいかないからねー」
「……ほんと余裕な、お前」
「凌統に言われたくないし」
平時と変わらぬ会話を交わし各々の得物を構え直す。
すると彼を討つべく集っていた兵の山が微かに揺らいだ。
「顔売れたんじゃないか?」
「そりゃ周瑜さまに付いて色んな戦場に行ってるからねえ」
「将でもないのにな」
「……将でもないのに援軍行かされてるしね…」
本当に将でもない自分の顔なんぞ売れてほしくもないのだが。しかも敵になど…。
まあ、後ろ立つ彼よりは売れていないだろう、と気を取り直して前を見据える。
「では将軍さま」
「ん?」
「この後は如何様に?」
合わせることの出来ない視線。だが諸々の期待を言葉には込めて、目を細めた。
背後で小さく笑む気配がする。
「策ではあちらさんにしてやられたけどな」
「戦ではこっちが上をいく」
「了解」
周囲の空気を変えた凌統の言葉に笑って頷いた。
―――ならば自分も“勝つ”と言う彼の為、精一杯の力を揮おう。
背中合わせの力に、安堵を覚えながら。
※このまま真面目に終わらせたい方はスクロールしないのをオススメします。
そう余裕露わに言葉を交わす自分たちを敵が見逃すはずもなく。
近く迫った兵の剣を音を立てて払った。
返す刃でその身を打つ。
変わるよう向かってきた次なる敵の槍を捉えながら、見えない場所でも同じように敵の声があがって彼の元にいくつ
かの足音が走り寄るのを聴いた。
―――来る。
凌統の間合いへと踏み込んだ音にそう思った瞬間…
―――ごんっ
「…………」
「…………」
しーん、と。一瞬前までは考えもつかない、戦場にあるべきではない沈黙が落ちる。
「…………」
「…………」
「…………」
「……………あーと……、…?」
「…………」
「…その、…当たった、よな…?」
ひゅるり、と一陣の風が吹く。
それはまるでこの胸中を表しているかのようにどこか冷たい。
「……悪かったって…」
「へえ…」
ぴしり、とひび割れるような音に慌てて振り向くのが分かる。
「いやマジで悪かった。この通り」
「…………」
真剣に謝ってくるのを流し、痛む頭を押さえながら
もう絶対凌統と背中合わせに戦うものか、と深く思った。
ヌンチャクは背を守る味方にさえ有効らしい
05.11.29UP
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取りあえず、一言。
スンマセン……!(汗)
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