追いかけて、追いかけて、
その先に見つけるものは?
― 捕まるな! ―
「てめぇ!もう一度言ってみやがれ!!」
「ったく、やだねぇ理解力のない奴は」
ぎゃあぎゃあと、まるで子どもの喧嘩のような言い合いが聞こえてくる。
それに周瑜の元へと竹簡を運んでいたは足を止めた。
目線の先にはいきり立つ甘寧と、怒号を流しながら更に煽る凌統の姿。
もう毎度のことであるそれに今更動揺することもないのだが。
その二人が立つのは城に勤める多くの者が通る回廊である。
彼らの仲の悪さを知らぬ者がいないとはいえ、こんな往来で騒がれると注意の一つもしたくなるというものだ。
(本当はあんま言いたくないんだけどな…)
長く深いため息をついては声を掛けるべく二人の近くへと歩み寄った。
「で、今度は何が理由の喧嘩?」
「「!」」
こうして言葉を掛けるまで気付かぬほど熱中していたとは…。
武将としていいのだろかと呆れながら聞く体勢をとる。
「鍛錬の時にこの野郎が“右脇が甘ぇ”とかいちゃもんつけてきやがったんだ!」
「またそんな子どもみたいな…」
言って凌統を指差す甘寧に脱力する。それが気に食わなかったのか片眉を上げ凌統も口を開いた。
「俺は事実を言ったまでだぜ?まあ図星指されたこいつが俺の攻撃法に文句をつけたのが子どもっぽいってのは否定しないけど」
「何だとっ!」
「何だよ?」
「あーもう止めなって!!」
ビシビシと視線に火花を散らせ睨み合う二人に、いつも仲裁してる呂蒙殿の苦労を知った。
(凄いな、呂蒙殿は…)
痛むこめかみを押さえながら思わず遠い目になる。
しかしてその彼がいない今、何とか自分が宥めるしかないわけで。
「せめてさ、こんな回廊の真ん中じゃなくて離れたところで話し合わない?」
「「誰がこんな奴と!」」
「………」
「「真似すんな!!」」
「……仲が良いのか悪いのか…」
「「悪いに決まってるだろ!」」
「あー、そう…」
ここまで綺麗に揃えておきながら何を言うのやら。
まあこれ以上悪化させるのも嫌なので追求はしないけれど。
「話なんてするわけないだろ」
「てめぇに言われずとも願い下げだ!」
「だから、せめて場所を考えてって…」
呂蒙殿ーーーーっ!!と援軍を叫びたい。頭を抱えたくなるとはこういうことを言うのか。
そんなに構わず彼らは再び言い合いを始める。
内容は先ほど彼らが互いに訴えたものの蒸し返しだ。
一向に止む気配のないそれに、もう放っておこうかなんてが考えだした頃に事態は動く。
「だったら俺を止めてからそんなことを言うんだな」
ぐいっと引かれた手によろけ、
気が付いたら彼に促されるまま走りだしていた。
呂蒙殿…本気で貴方を尊敬致します……。
攫われる気持ちってこういうもんか、なんて嫌に晴れた空を見上げた。
05.04.30UP
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わー、いっちょ前に選択だー…。としか言えない…(苦笑)
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